禁煙外来
禁煙外来
タバコはがんや心疾患をはじめさまざまな病気の原因になったり罹患リスクを高めたりすることが分かっています。しかし、喫煙者の多くはタバコに含まれるニコチンへの依存状態になっているため、個人の意思で禁煙するのは難しいのが実情です。そこで、通院して医師の指導の下、禁煙に取り組むのが禁煙外来です。
禁煙外来は2006年に一定の条件に当てはまれば健康保険が適用されるようになり、設置する病院が増えています。
治療には禁煙補助薬が使われ、内服薬と貼付薬があります。禁煙補助薬は禁煙に伴うイライラなどを抑える効果があります。禁煙外来では医師の指導で喫煙量に合わせた治療が段階的に行われるため、市販薬を使って個人で行うよりも持続し、禁煙を達成する確率が高くなっています。
ご自身のためにも禁煙治療に当院で取り組んでみませんか。
Q1. 禁煙外来ではどんな治療を行いますか?
世田谷区の当院では、飲み薬のチャンピックス(バレニクリン)またはニコチンパッチによる禁煙治療を行っています。チャンピックスは脳のニコチン受容体に作用してタバコへの渇望感を抑える飲み薬、ニコチンパッチは皮膚から安定してニコチンを吸収し離脱症状を軽減する貼り薬です。どちらも医師による診察と併せて生活習慣の見直しや行動療法を行い、禁煙をサポートします。どちらの薬が合っているかは、診察時に医師とご相談ください。
(日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8版」2022)
Q2. チャンピックス(バレニクリン)とはどんな薬ですか?
チャンピックス(一般名:バレニクリン)は、ニコチンを含まない禁煙補助の飲み薬です。脳内のニコチン受容体に結合し、2つの働きで禁煙をサポートします。①ニコチンが受容体に結合するのをブロックして「タバコを吸っても満足感が得られない」状態にする、②受容体を部分的に刺激してドパミンを少量放出させることで、禁煙中のイライラや「吸いたい」という強い欲求(渇望感)を和らげる、という仕組みです。ニコチンを含まないため、ニコチンそのものへの依存を新たに作ることなく治療できます。
(Cahill K et al., Cochrane Database Syst Rev. 2016)
Q3. チャンピックスの治療期間と費用は?
標準的な治療期間はニコチンパッチと同じく12週間で、受診回数も計5回です。服用は最初の1週間を「慣らし期間」として少量から始め、2週目以降に通常量に増量します。禁煙開始日は服用開始から1〜2週間後に設定するのが一般的です。
保険診療(3割負担)の場合、5回分の診察料と薬代をあわせた総額はおよそ18,000〜20,000円程度です(薬局での調剤費用を含む)。ニコチンパッチ(約13,000円)と比べてやや高くなりますが、保険適用条件はニコチンパッチと同様です。
(日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8版」2022)
Q4. チャンピックスとニコチンパッチはどちらが効果的ですか?
チャンピックスはニコチンパッチと比較して禁煙成功率が高いとされており、12週間後の成功率はチャンピックスで約50〜60%、ニコチンパッチで約40〜50%と報告されています。ただし、どちらが「合っているか」は個人差があります。
吐き気や精神症状への不安がある方・飲み薬が苦手な方にはニコチンパッチが向いている場合があります。一方、過去にニコチンパッチで効果が出なかった方や、より強い渇望感に悩んでいる方にはチャンピックスが選択肢となります。どちらを選ぶかは診察時に医師とご相談ください。
(Cahill K et al., Cochrane Database Syst Rev. 2016/Stead LF et al., Cochrane Database Syst Rev. 2012)
Q5. チャンピックスに副作用はありますか?
最も多い副作用は吐き気で、服用開始後しばらく続くことがあります。食後に服用すること、十分な水で飲むことで軽減できる場合があります。そのほか、不眠・異常な夢・頭痛・便秘などが報告されています。
また、まれにうつ症状・気分の変動・攻撃性・自傷念慮などの精神神経系の副作用が起こることがあります。これらが現れた場合はすぐに服用を中止して受診してください。運転や高所作業など集中を要する業務に就いている方は、眠気・めまいにもご注意ください。
(日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8版」2022/FDA Drug Safety Communication, 2011/チャンピックス添付文書)
Q6. チャンピックスを使えない方はいますか?
以下に該当する方はチャンピックスを使用できない、または慎重な判断が必要です。初診時に必ず医師へお申し出ください。該当する場合はニコチンパッチへの変更を含めて、安全な治療方針を一緒に決めていきます。
使用できない方(禁忌)
慎重な使用が必要な方
(チャンピックス添付文書/FDA Drug Safety Communication, 2011)
Q7. ニコチンパッチの治療期間と費用は?
禁煙補助薬のニコチンパッチは8週間使用し、残りの4週間はニコチンパッチなしで禁煙を継続するのが標準です。治療は計12週間で、最初の1ヶ月は2週間ごとの受診が必要となり、初診と合わせて合計5回の受診が必要です。
保険診療(3割負担)の場合、5回分の診察料と薬代をあわせて総額約13,000円程度です。保険適用には、喫煙本数や喫煙年数による「ブリンクマン指数」が200以上、TDS(ニコチン依存症スクリーニングテスト)で5点以上、禁煙の意思があることなどが条件となります。
(日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8版」2022)
Q8. 加熱式タバコや電子タバコは安全ですか?
安全とは言えません。日本国内で販売されている電子タバコはニコチンを含みませんが、加熱式タバコにはニコチンが含まれ、依存や健康被害のリスクがあります。さらに、加熱式タバコや電子タバコに含まれるプロピレングリコールやグリセロール(グリセリン)は、加熱や燃焼によってアクロレインや発がん性物質であるホルムアルデヒドに変化することが明らかになっています。また、加熱速度やグリセロールの添加量によって有害物質の放出量が増加することも報告されています。日本呼吸器学会は2019年に「加熱式タバコや電子タバコに関する見解と提言」を発表し、禁煙目的での使用を推奨していません。
(日本呼吸器学会, 2019/Jensen et al., N Engl J Med. 2015/Miao et al., Biomass Conv Bioref. 2025)
Q9. 電子タバコや加熱式タバコで肺が悪くなることはありますか?
あります。米国ではEVALI(電子タバコ・加熱式タバコ関連肺障害)と呼ばれる重い肺の病気が報告され、咳や息切れが急激に悪化し、入院が必要になる重症例も多く、人工呼吸器による管理や死亡例も確認されています。米国CDCの報告では、2020年までに全米で2,800例以上が確認され、68例が死亡しています。国内でも複数の症例報告があり、日本呼吸器学会は2021年に調査協力を呼びかけています。
(Layden et al., N Engl J Med. 2019/CDC 2020/日本呼吸器学会, 2021/Respirol Case Rep. 2016/Respiratory Medicine Case Reports. 2019)
Q10. 禁煙成功率はどのくらいですか?
ニコチンパッチを使った場合、12週間の治療後の禁煙成功率は約40〜50%と報告されています。成功率を高めるには、薬物療法と行動療法の併用、そして再喫煙のきっかけを避けることが重要です。
(Stead LF et al., Cochrane Database Syst Rev. 2012)
Q11. 禁煙するとどんな健康効果がありますか?
禁煙後20分で血圧と脈拍が下がり、12時間後には血中の一酸化炭素濃度が正常化します。1年で心疾患のリスクが約半減し、5〜10年で脳卒中や肺がんのリスクも大幅に低下します。長期的に見れば、健康寿命の延長が期待できます。
(U.S. Surgeon General’s Report, 2020/日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第8版」2022)